登山ガイド スキーガイド
鳥羽 晃一
参加者の「知りたい」を引き出す引き算のガイド
大雪山系旭岳を中心に登山ガイドとスキーガイドを務める鳥羽晃一さん。大学の探検部出身という異色の経歴の持ち主で、豊富な経験とコミュニケーション力の高さに定評があります。そんな鳥羽さんのモットーは「参加者の興味を引き出す引き算のガイド」。自然が好きで、人好きじゃないと、自然体験のガイドは務まらないことをこの30年で学びました。
四季がはっきりしている北海道の魅力
四季がはっきりしているのが、北海道の魅力―。地元住民があたり前に感じていることの価値は、外国人観光客や本州からのお客さんが教えてくれました。生命が芽吹く春の喜び、内陸部特有の夏の暑さ、大雪山を染める日本一早い紅葉、そして美しく厳しい銀世界の冬。本州からのお客さんが、「今年はカタクリをもう一度楽しめた」と喜ぶ姿が印象に残っています。「東京から4~5時間で、大雪山の登山口に立てるロケーションは特別です」と強調します。
毎日何かを発見し、感動する心を持ち続ける
ふだんは登山とスキーのガイドが中心ですが、時にはカヌーガイドや高山植物、バードウォッチングに特化したツアーを組むこともあります。アイヌの人たちの文化にふれるツアーも喜ばれます。「面白いのは、日本人は花や草木の名前を知りたがりますが、外国人は地理的な植生のことを知りたがるんです。ここはアジアの極東だから、こんな気候で、こんな動植物が生息してるんですよってね。だから、動植物の知識はもちろん、地理や歴史についても広く学ぶようになりました」
一方で、それで若いころは失敗もありました。「勉強したら、それを披露したくなりますよね。それで、ツアーが座学のように教える側、教えられる側という構図になってしまって、それは楽しいツアーではなかったと思うんです」と反省します。
いま心掛けているのは、ツアー参加者に「感動」してもらうこと。そして、鳥羽さん自身も感動する心を失わないため、ガイドの仕事では楽しむことを大切にしています。毎日、旭岳を登っていても、自然は変化している。それを発見する喜び…観察眼を磨くことが重要と語ります。
ガイドは人と人とのコミュニケーション
鳥羽さんの最大の特長はコミュニケーション力。外国人のガイドは、ネイティブの通訳と一緒に行くことが多いのですが、鳥羽さんが簡単な英語で、とにかくコミュニケーションをとる姿がうれしかったと感謝されたことがあります。「ガイドは人と人なんだなということを再確認しました」。
大学では探検部に所属し、四国に1カ月間カワウソを探しに行ったこともあります。登山や川下りは、探検部の活動のためにアウトドアで生き抜く技術を身に付けるためでした。当時の仲間とは今も交流があり、北海道のお客さんを本州の登山に連れて行ったときは、仲間の紹介で、現地のガイドに案内してもらうこともあります。
鳥羽さんは、大学の探検部時代から今のガイドの仕事までを振り返り、「遊びを本気でやってきた」と語ります。もしかしたら、それは少年時代から変わっていないのかもしれません。鳥羽さんの感動を失わない心の原点を垣間見た気がします。
登山ガイド スキーガイド
・自然公園指導員(環境省)
・初級パラスポーツ指導員
・WAFA
・LNTトレーナー
・北海道アウトドアガイド資格(自然)
大学時代に探検部に所属し、山岳縦走、競技ラフト、サバイバル研究、野生生物調査などに青春を費やす。20代で北海道に移り、自然体験学校の設立に関わる。1996年~2009年まで東川のNPO法人ねおすに所属。大雪山自然学校の自然体験プログラムの構築に携わる。登山ガイドは国内外(道内各地、日本アルプス、海外NZトレッキングなど)幅広く経験している。