株式会社とうま振興公社 代表

石黒 康太郎

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「まずはやってみる」 企画が湧き出てくるアイデアマン

当麻町の豊かな自然をフィールドに、自然体験のガイドを手がけながら、町内の鍾乳洞やキャンプ場を経営する第三セクター代表の顔を持つ石黒康太郎さん。当麻町が掲げるスローガン「木育」「食育」「花育」を四季を通じて実践する、行動するアイデアマンです。

まずは観察 そして興味を持ってもらう

石黒さんがコーディネートする自然体験は、ツリークライミング(ツリーイング)やスノーシューなど。木育マイスターとして企画を立ち上げ、友人にガイド役をお願いしているツリーイングは、木登り専用のロープにツリーハーネスと呼ばれる安全ベルトを装着、ヘルメットをかぶって木に登っていきます。コツさえつかめば特別な体力は必要なく、主に足の力を使って登るので子どもや女性でも無理なくチャレンジできます。

「ふだんは見上げている木の枝を、高さ5~6メートルから見下ろすことで、葉っぱの付き方など色々な発見がある。そこから森や自然に興味を持ってもらいたい」と石黒さん。最初から木や花の名前を教えるのではなく、まずは観察してもらう。そして興味がわいたら、自分で調べたり、聞いてみたり、能動的に学んでもらうのが一番と語ります。

「ツリーイングに限らず、足元に生えている草花をしゃがんで下から覗いてみるのだっていい。花の名前は重要じゃない。春に咲くこの紫の花、とてもかわいいな」。そう感じるのが自然を楽しむポイントだと説明します。

感覚を研ぎ澄ます鍾乳洞のナイトツアー

当麻町観光のハイライト「当麻鍾乳洞」は、はるか1億5千万年前のジュラ紀から、気の遠くなるような時間をかけて地下水の溶触作用が作り上げました。全長135メートルを誇る鍾乳洞は北海道天然記念物にも指定されており、学術的にも価値の高い、まさに地球の神秘です。

当麻鍾乳洞は、ふだんは午後5時で営業を終了します。石黒さんは、この鍾乳洞のナイトツアーを考案しました。営業時間中は、鍾乳洞内の通路と鍾乳石はライトで照らされ、ガイドの音声が流れています。ナイトツアーでは灯りとガイド音声を消し、ヘッドライトだけで進んでいきます。ツアーでは通常5分ほどのコースをたっぷり1時間かけて、暗闇を進んでいきます。「自然の中で本当の暗闇って、実は体験した人はほとんどいない。ツアーではヘッドライトを消す時間もあって、真の暗闇を体験してもらいます」。そうすると、人間が頼るのは聴覚のみ。それまで聞こえなかった、鍾乳洞内のかすかな水の音などが聞こえてきます。

冬期間は閉鎖されている鍾乳洞の冬のツアーも導入しました。鍾乳洞内は冬でも10~12℃と外気より温かいため、もやがかかったような幻想的な景色を楽しむことができます。鍾乳洞の入口にたどり着くためのスノーシューもアクティビティのひとつです。

地元の人にこのまちの自然を誇りに思ってもらいたい

「もともと札幌でも緑の多い地域で育ったので、自然は好きだったんですが、働き始めてからだんだん自分の時間を作れなくなって、その魅力を忘れていました。それを思い出させてくれたのが当麻町。ここには外から来た人たちが感動する観光資源がたくさんある。それを地元の人たちに誇りに思ってもらうのが目標」と力を込めます。

「面白い」があふれる森に親しんでほしい

柔らかく、表面に虫の食害跡が発生しやすいため、林業では一般的に価値の低いシラカバの木も、樹液を採取したり、小さな枝の芯にクレヨンを挿して「森の色エンピツ」を作ったり、森には遊びが溢れています。油分の多いシラカバの樹皮は、北海道ではかつてストーブの焚き付けとしても利用されていました。「ガイドの仕事って、知識を説明するのではなく、自然の中で驚きや感動してもらう場面を用意することだと思うんです」。石黒さんにとって、山や森は遊びの宝庫。いま先輩ガイドから教わった「もっと遊べ」の意味をかみしめます。

「層雲峡のようにダイナミックな渓谷や、美瑛のように美しい丘の景色はないけれど、当麻にはちょうどいい自然体験ができるロケーションがあります。私はそれを都市と大自然の『すきまツーリズム』として売り込みたいと考えています。週末時間ができたので、ちょっと当麻スポーツランドへキャンプに行こう。そんな感じで親しんでもらえたらうれしい」と語ります。

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株式会社とうま振興公社 代表
石黒 康太郎
・木育マイスター
・MEDIC First Aid Childcare Plus
・赤十字雪上安全法救助員Ⅰ
・RACアシスタントリーダー
・NACS-J自然観察指導員
・介護福祉士

1980年、札幌市出身。知的障害者施設の介護をしていた経験を持つ、木育マイスター。当麻町では、自然体験ガイドのほか、町内の飲食店の紹介など広くまちおこしに関わる。地元の人の「ここには何もない」という声を聞き、それならば面白いモノやコトを作ろうと次々とアイデアを出し、実践している。

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